『えーと、えーと・・・』
台所でガサゴソしてみたが、スリランカに行った友達から貰ったはずの紅茶が見つからない。
『悪ぃー、お茶でいい?』
『え?あ、別に何でも・・・』
『了解』
コンロにかけたやかんを見ながら、僕は気持ちを落ち着かせようとした。
けど、ダメだった。落ち着ける訳ない。
部屋の方をみると、彼女は台所に背を向け、家具調コタツに入っていた。
その背中はあの時より二回り位小さく見えた。
『お待ち!』
僕は彼女の前にまぐカップに入れた煎茶を出して、対面に自分のカップを持ちながら座った。彼女は出されたまぐカップをジッと見て何かを言いかけた。
『ねぇ、ちょっと思ったんだけど・・・』
『あ、悪い、湯のみなんてしゃれたのなくてさ』
『いや、そうじゃなくてなんでもうコタツが出てるの?まだ11月になったばかりだよ』
彼女は細い指でコタツ布団をつまみながら言った。
『え?でも、暖かいだろ?』
『それは暖かいけど、まだ11月の頭だよ?それに昨日までは結構暖かかったでしょ?』
『いや~、今日の朝天気予報見て出していったんだよね~寒くなるって言ってたでしょ?』
『ウソ。あなたに朝そんなことする余裕がないのは知ってる。テレビを見ないのも知ってる。・・・まさか・・・ずっと出しっぱなし?』
『アタリ!いやーこの夏は冷夏だったよねぇ?』
『暑かった。・・・洗ったりしてないの?』
『省エネルギー!』
『・・・もう、なにも言わない』
彼女はあきれ果てたようにマグカップを両手包み込むようにして持ち口に運んだ。
緊張した空気が少し緩んだ気がした。けど、会話が途切れるとまた冬の始まりの澄んで凛とした冷たさのような緊張に包み込まれた。
しばらくお互いに何も言わずお茶を飲んでいた。
『で?』
『うん?』
『いや、会いにきて待っててくれたのは・・・その、なんか用があったん・・・じゃないかと』
『・・・』
『・・・うん、まぁ、あれだ。その、お茶のお代わりは?』
我ながらマヌケなことを言っている。
彼女はコタツ布団の青と緑の格子柄をみながら首を横に振った。
『知ってるよね?』
柔らかな声で彼女が聞いた。
『うん?・・・あぁ、離婚のことか?』
『うん』
『そりゃ、街歩いていれば嫌でも目に入って来たさ』
『・・・そう』
『ま、日本は平和だよなぁー』
『?』
『だってたかが一組の離婚だぜ?それが夕刊紙の一面なんだから。』
『・・・ホントに』
彼女は自嘲気味に小さく笑った。
台所でガサゴソしてみたが、スリランカに行った友達から貰ったはずの紅茶が見つからない。
『悪ぃー、お茶でいい?』
『え?あ、別に何でも・・・』
『了解』
コンロにかけたやかんを見ながら、僕は気持ちを落ち着かせようとした。
けど、ダメだった。落ち着ける訳ない。
部屋の方をみると、彼女は台所に背を向け、家具調コタツに入っていた。
その背中はあの時より二回り位小さく見えた。
『お待ち!』
僕は彼女の前にまぐカップに入れた煎茶を出して、対面に自分のカップを持ちながら座った。彼女は出されたまぐカップをジッと見て何かを言いかけた。
『ねぇ、ちょっと思ったんだけど・・・』
『あ、悪い、湯のみなんてしゃれたのなくてさ』
『いや、そうじゃなくてなんでもうコタツが出てるの?まだ11月になったばかりだよ』
彼女は細い指でコタツ布団をつまみながら言った。
『え?でも、暖かいだろ?』
『それは暖かいけど、まだ11月の頭だよ?それに昨日までは結構暖かかったでしょ?』
『いや~、今日の朝天気予報見て出していったんだよね~寒くなるって言ってたでしょ?』
『ウソ。あなたに朝そんなことする余裕がないのは知ってる。テレビを見ないのも知ってる。・・・まさか・・・ずっと出しっぱなし?』
『アタリ!いやーこの夏は冷夏だったよねぇ?』
『暑かった。・・・洗ったりしてないの?』
『省エネルギー!』
『・・・もう、なにも言わない』
彼女はあきれ果てたようにマグカップを両手包み込むようにして持ち口に運んだ。
緊張した空気が少し緩んだ気がした。けど、会話が途切れるとまた冬の始まりの澄んで凛とした冷たさのような緊張に包み込まれた。
しばらくお互いに何も言わずお茶を飲んでいた。
『で?』
『うん?』
『いや、会いにきて待っててくれたのは・・・その、なんか用があったん・・・じゃないかと』
『・・・』
『・・・うん、まぁ、あれだ。その、お茶のお代わりは?』
我ながらマヌケなことを言っている。
彼女はコタツ布団の青と緑の格子柄をみながら首を横に振った。
『知ってるよね?』
柔らかな声で彼女が聞いた。
『うん?・・・あぁ、離婚のことか?』
『うん』
『そりゃ、街歩いていれば嫌でも目に入って来たさ』
『・・・そう』
『ま、日本は平和だよなぁー』
『?』
『だってたかが一組の離婚だぜ?それが夕刊紙の一面なんだから。』
『・・・ホントに』
彼女は自嘲気味に小さく笑った。